会計事務所のM&A体験談 ② (2/2) 【譲受側 H税理士法人】
(会計事務所のM&A体験談 ② (1/2) 【譲受側 H税理士法人】よりつづき)
(4)スタッフの引継ぎ状況
・引継ぎスタッフは当初より全員が年齢等の事情により、1年以内に退職との希望があり、遺留しましたが、残念ながら継続雇用できませんでした。
・このことのデメリットは、新たな人員の確保が必要となり、今の状況では、人材確保に苦労しました。一度に多くのクライアントを引き受けることは今まで経験のないもので大変な労力を要しました。
・一方メリットとしては高齢のスタッフだったので、IT関係の習熟、利用ソフトの変更など仕事の進め方を変えることへの対応が難しかったかもしれず、スタッフの世代交代が結果としてできたこと。
(5)会計ソフト、税務申告ソフトの状況について
・会計ソフト、申告ソフトともに全く違っており、移行には労力がかかりました。
・OCRで伝票読み込みをするクライアントは業務フローを変えていただきました。
(6)譲渡側の先生のフォローについて
・会計事務所を譲渡して終わり、というスタンスでなく、クライアントと我々の関係が良好になるよう考えていただき、フォローしていただいたので、大変感謝しています。
・クライアント訪問に同席していただいても、税務的な判断に関して一歩下がって我々の意見を尊重してくれました。
(7)M&Aをして良かった点、大変だった点
・クライアントが一度に増えるので、売上は当然増えます。
・対応することが一時に来ます。引継ぎスタッフは事情により1年以内に退職したので、その後はクライアントだけの引継ぎとなりました。物理的な業務量の多さ、また気配りなど精神的な面からも疲弊しました。その余波は既存クライアントや従業員や家族にも及んだと思います。
・譲渡側の税理士が高齢であるとクライアントも高齢化しています。引継ぎクライアントのうち、40代、50代の経営者は5社でした。個人法人で20件は後継者がおらず平均年齢は70歳前後です。あと5年以内に大半が廃業していくと思います。
・ビジネス的な採算で考えれば、投資額(買収額)は3年以内で回収し、その後3年間が収益獲得、この6年間で如何に派生的に仕事を増やせるか、法人内の組織を固めるかだと思います。
(8)最後に一言
拡大期にある会計事務所にとってM&Aは有望な選択肢です。一度にクライアントを増やすことができるわけで、これを営業で増やす事を考えると時間を買ったと言えます。このような機会を提供してくれたM&A仲介業者のNICOT社さんには感謝です。まさに一期一会の場を準備してくれたわけです。うまくいくと信じて前に進めば、道は開けます。買収に踏み切るまでには色んな事を想定し思い悩むわけですが、チャンスは何度も巡ってきませんので私は前に進むことにしました。
もちろん高齢化したクライアントが多く、当初見込んだ通り廃業するクライアントも出てきますし、コロナの影響もあって5年以内は加速的にこの数は増えていくと思います。先にも書きましたが、3年で投資回収、その後3年で収穫、あとは自分の努力次第でM&Aの成果を何倍にもすることは可能です。
大変であったのは事実ですが、仲介事業者のアドバイスや譲渡側先生のサポートもあって何とかなったという感じです。
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