質問と回答

Q & A

Q1.会計事務所のM&Aは、実際にはどのようなパターンで行われますか?

実際には、所長先生のご意向、引受け側(譲受側)の希望、会計事務所の規模、地域、クライアントの状況、事務所の賃貸借契約関係、設備機器のリース契約などを総合的に考慮して、ベストな方法とタイミングを提案します。大きく分けて、①事務所統合型、②税理士法人の支店型、③税理士派遣型に分かれます。

①事務所統合型は、双方の事務所を1拠点に集約し、合同事務所または税理法人として運営する方法です。

②税理士法人の支店型は、引受け手(譲受側)の税理士法人に合流する形で、税理士法人の支店として運営する方法です。いずれ時期を見て、拠点集約または支店の新しい社員税理士に承継します。

③税理士派遣型は、引受け手(譲受側)の会計事務所から後継候補となる税理士を派遣して、業務の引継ぎを行います。時期を見て①または②の方式で事務所の統合を行います。

いずれにしても所長先生の引継ぎサポートが必要で、顧問または相談役、社員税理士、または勤務税理士として、クライアントとスタッフのために、業務支援をお願いすることが一般的です。しかし、毎日、事務所で勤務するイメージではなく、必要な時や週のうち数日など、自由な勤務スタイルとなります。

 

Q2.会計事務所のM&Aのメリットは?

いろいろとありますが、主なものをリストアップします。

・複数の引受け手(譲受側)となる候補リストから、最適なパートナーを選ぶことができます。所長先生の考え方、相性、希望条件に見合うパートナーをご提案します。相手先の規模、経験、地域、スタッフなども十分に検討して選ぶことができます。

・クライアントとスタッフが安心します。長年の顧問契約やスタッフとの信頼関係から当初は「この先どうなるのだろうか」、と不安に思われることもありますが、入念な打ち合わせと引継ぎ準備、所長先生・スタッフとのコミュニケーションを通じて、円満な承継が行われます。引受先の会計事務所の規模が大きい場合、安心して業務の引継ぎが可能で、スタッフの雇用条件も確保され、福利厚生なども充実します。

・事務所経営の悩みから解放されます。税理士業務の複雑化、会計・税法の制度変更の高度化、スタッフの採用難、繁忙期のストレス、高額な設備・ソフトのリース代、税理士損害賠償リスク、などの悩みから解放されます。引き続き顧問・相談役としてサポート・引継ぎ業務を行いますが、安心してリタイヤ生活を送ることが可能です。

・M&Aによる譲渡収入、引継ぎ先での顧問報酬など安定収入が保証されます。知り合いに任せる、後輩に任せるなどのケースでは、金銭的なメリットがなく正式な合意や契約もなく、後々にトラブルとなる可能性があります。

 

Q3.M&Aの譲渡対価は、どのくらいですか?

最適なパートナーを選び、クライアントとスタッフに迷惑をかけないことはM&Aにおいて重要なポイントですが、やはり、M&Aの譲渡対価は一番気になる部分で非常に大きな要素です。

中小企業のM&Aでは、①時価ベースの純資産価額と②のれん評価額の合計をベースとして交渉することが一般的です。この②のれん評価額は、特殊要因を除いて正常な経営状態と仮定した場合の税引き後利益の3年分、または5年分などと幅広くとらえられます。

会計事務所のM&Aでは、引継ぎ対象となる資産が少なく、クライアントとスタッフの引継ぎがメインとなりますので、基本的には、②のれん評価額が交渉価額となります。一般的には事務所の平均年間売上高(顧問報酬)をベースに交渉されます。個々のクライアントの評価額を考慮する場合もあり、年間売上高の1.〇倍から〇〇%などで評価される場合も、過去の平均営業利益の3年分~5年分という評価事例もあります。

会計事務所のM&Aでは、収益構造の良し悪しがのれん評価額の算定に影響します。つまり、一般的に、顧問報酬の割合が高い、またはスタッフ一人当たりの売上高が高い、などの場合は収益性が高く、のれん評価額も高くなります。クライアントの規模、客層、件数、月額報酬の多寡など、収益構造は譲渡価額の交渉に非常に重要な要素となります。また、過去3年間の顧客数の推移、1件当たりの年間報酬など、業績の推移ものれん評価額に影響します。

 

Q4.M&A後の所長先生の待遇はどうなりますか?

引受け側(譲受側)の会計事務所との交渉によりますが、基本的に所長先生のご要望が優先されます。一般的には、2~3年間の顧問、相談役という立場でスタッフと一緒に引継ぎやクライアントのサポートをお願いします。所長先生が今まで通りに在籍されることが重要で、クライアント、スタッフにとって安心して引継ぎを行うことができます。この場合には、M&Aの譲渡対価とは別に、勤務内容、顧問給料の額、期間についても、契約条件の中で記載します。

引受け手の譲受事務所にとっても、所長先生が引き続きサポートする環境が重要です。クライアントとスタッフが安心して継続することがM&Aの成否を分けることになります。

 

Q5.M&Aでクライアントは離れないか?

クライアントの継続性がM&Aにとって最も重要です。引受け手(譲受側)にとっても、税理士業界の競争の厳しさから、この点を非常に心配されます。

しかし、経験的にクライアントの離脱率は少ないと考えてください。むしろ所長先生とスタッフの継続的なサポート、引受け手側の新たな組織的なサービスなどで、クライアントも安心されるケースが多いです。クライアントの会社内容、経緯、背景、社長の考えなども一番よく分かっている所長先生と業務を精通しているスタッフと一緒にサポートすることになり、すぐに顧問税理士を切り替えることはめったにありません。クライアントの中には、所長先生以外のお知り合いの税理士が数人いてもおかしくない時代ですが、M&Aの後も継続することがほとんどです。

注意点は、今までの契約内容、業務内容、報酬料金は基本的に変わらず、そのまま継続して引き継ぐことです。

所長先生と新しい引受け手の税理士、新スタッフとの挨拶とコミュニケーションなど十分に時間をかければ、新たな良い関係が構築されます。新しい視点も加わるイメージとなり、クライアントにとっても新鮮でより手厚いサービスを受けるプラスの機会となります。

また、M&Aの前後の手順にも細心の注意が必要です。基本的には成約・決済までは内密にすることが原則ですが、クライアントの中には事前に知らせるべき場合もあります。挨拶状、挨拶回り、スタッフの交流、今後の作業予定、資料やデータの移管、業務ソフトなど、クライアント第一に考えて計画を立てて作業を行います。この準備作業を所長先生と引き受け手の税理士、スタッフで協力して行い、クライアントからより信頼されるようになることが大事です。

 

Q6.M&Aでスタッフの雇用はどうなりますか?

スタッフの方の雇用継続も重要な契約条件と考えております。引受け手(譲受側)の会計事務所にとっても所長先生と一緒にスタッフの方のサポートが必要です。また、クライアントも会社の状況、業務内容を理解しているスタッフの方が継続してサポートしてもらえる方が安心します。所長先生と長く一緒に過ごされたスタッフを第一に考えられるケースが多く、交渉では重要な項目となります。基本的には、スタッフの方は、雇用主が変わりますので、形式的に一度退職扱いとなり、その後は同じ条件での再雇用となります。その際に退職金があれば所長先生から統合前に支給されます。また、スタッフの方も最初は動揺されますが、引継ぎ作業などを一緒に行い、統合後の新事務所体制で業務を行いますので、その過程でコミュニケーションを図り継続勤務となるケースが一般的です。

 

Q7.所長先生が何歳ぐらいから、会計事務所のM&Aが行われますか?

早い場合で60歳前後の所長先生のM&Aもあります。70代の所長先生のM&Aのご相談が一番多くあります。クライアントとスタッフが安心できるように、というご要望が一番ですが、健康上の問題、早めの引退をご希望、ほかにやりたいことがある、税理士業務の複雑化、リスクの増加など、理由は様々です。ご相談を頂いてから6か月~1年以内のご成約を目標としておりますが、準備期間も含めて、お早目のご相談をお待ちしております。